小規模持続型択伐林(SSS林)の視察
12月12日に関東森林管理局・静岡森林管理署・天竜森林管理署の国有林の方々14名と森林健康経営協会の方々4名が当演習林の小規模持続型択伐林(SSS林)を視察に来られました.一部の作業に携わった天竜フォレスターさんも参加し,補足説明を頂きました.SSS林については,技術雑誌「森林技術」の10月号で紹介させていただいています.小面積の森林を対象に, 10年で元の場所に戻る方式で群状択伐(ギャップにはヒノキ植栽・無下刈り)と中層間伐の組み合わせの作業を継続するというものです.100年後には,1~100年生の樹木と180年生の樹木が狭い場所に混在する森林ができあがるでしょう.また広葉樹と枯木を積極的に残しています.種多様性・齢構造多様性と木材生産を小さな林で両立させようとするものです.小規模森林経営者の持続的森林管理を目的に始めたものですが,大面積を対象とする国有林ではより効率的な展開が期待できるかもしれません.国民の森林環境への期待を負託された国有林に採用を検討いただきたいシステムです.
視察時に出された質問をいくつか紹介しましょう.
Q: 伐採方法が難しいのでは?A: 皆伐に比べれば樹高の半分程度サイズの群状択伐の伐採搬出作業は手間のかかる作業であるのは間違ない.作業システムとしては間伐と比較する方が現実的だろう.
Q: 残した広葉樹と植栽木の関係をどのようにするのか?A: 成長が進んで,どちらかを伐採が必要になった時まで判断を保留します.ある場合にはヒノキを犠牲にして広葉樹を残すケースもあり,逆のケースもある.ヘクタールに数十本の広葉樹林冠木が混交されればよいだろう.
Q: 群状択伐ギャップをどのように配置するのか?A: 空間配置を考えてランダムに配置している.ギャップの形状は方形と限らず場所に応じて柔軟に,ただし10年後のギャップは隣接しない.
Q: なぜ群状択伐は10m×10mのギャップなのか?A: 下刈りが不要になるサイズにとどめている.斜面の方向によってはやや大きいギャップもありえる.
Q: 間伐の選木はどうしたのか?A: 伐採率20%と個体サイズに偏りなくという指示で天竜フォレスター委託し,伐採搬出効率を考えて選木.(研究モニタリング林では,直営で将来木を定めた中層間伐)
森林管理のプロ集団である国有林の皆さんにこのシステムを受け入れて頂けるかは自信がありません.しかし,このシステムでは100年後の森林の姿を明確にし,その森林像に対して具体的な管理シナリオを持っていること,そしてその森林像に「複雑な構造」を描いていることを理解いただけていたらと思います.
{追記}「100年後を考えるより,今をどうするかで精いっぱいだ」との声はよく聞きますが,長期的なビジョンを描くことができるのは(描かなければならないのは)森林・林業ならではだと思っています.ウッドショックなど短期的な現象や材需要の好みの変化に柔軟に対応しながら,一つ一つの森に将来像を描いて(遠い将来への夢をもって)管理することは多くの林業家が普段実行していることと思います.一方で,その基本が各地で蔑ろにされている事例を見聞きすることが多くなったことは残念なことです.
(水)