森林保全学実習

紹介が遅くなってしまいましたが、9/3-9/6まで公開型の森林保全学実習が行われました。他大学から6名、静岡大から4名の参加があり、静岡大学の全フィールド(天竜・南アルプス・富士)を使った実習を行いました。このような公開型の実習に参加するのは私も初めてでしたが、他県の森林を見るというだけでなく、他大学の学生と交流できるのはとても良いと感じました。少しですが、その様子を紹介したいと思います。


9/3 静岡駅に集合した後、バスで富士吉田にあるカラマツ林のフラックサイトを見学に行きました。ここは国立環境研究所が主体に森林の炭素動態を調査しています。炭素循環や測定手法の説明を行いました。写真は、微気象要因や森林全体のCO2フラックスを測定するための調査鉄塔です。

カラマツ林床の様子。地面にある箱状のものは、根や微生物の呼吸によって発生するCO2を測定する装置です。富士山はシカの食害が深刻なのですが、このサイトではほとんど食害の影響が見られませんでした。不思議です。

奥に見えるのは、カラマツの樹冠にアクセスするための鉄塔です。鉄塔に上って、葉の光合成や枝の呼吸を測定しています。

9/4 森林限界付近の植生を観察するために富士山の5合目へ。この日はあいにくの雨でした。

モミの分枝パターンから年齢を予測しました。

富士吉田と同じカラマツですが、ずいぶん背が低いです。また、枝ぶりが特徴的で、強い風を受けるため、枝が特定の方角を向いています。フラッグツリーと呼ばれます。

カラマツの球果。

宝永火口を目指して。突然樹木が少なくなり、荒涼とした風景が広がります。火口は雲でほとんど見えませんでしたが・・・

宝永火口を見た後は、高鉢駐車場近くのウラジロモミ林で、シカの食害の状況を観察しました。とてもきれいな林ですが、林床の草本はほとんどシカに食べ尽くされています。

林床一面を同じ草が覆っています。この草はシカが食べないために残されました(名前は忘れました、スミマセン)。シカの食害は植生の構造を大きく変えてしまいます。

ちょっと見にくいですが、ウラジロモミの樹皮がシカによって食べられています(角で削ることも)。シカはウラジロモミの樹皮が大好きです。樹皮の中には養分を輸送する師管があるので、はがされてしまうと養分を根に輸送できなくなり、モミはやがて枯れてしまいます。

モミ林の側で、土壌呼吸測定の実演も行いました。

9/4 夕方に富士山から南アルプスフィールドへ移動。これは山犬段宿舎の調理場の様子。技術職員インターンシップに来ていた学生さんが調理を手伝ってくれました。ほんとうは外でBBQの予定だったのですが、あいにくの雨により室内での食事となりました。

9/5朝 南アルプス宿舎の講義室のようす。この日の予定の説明とそれに関連した講義をしました。

南アルプスフィールドにはたくさんの樹種があります。主要な種を採取して、名前や識別方法を説明しました。

ちょっとわかりにくいですが、穴を掘って土壌断面を説明しています。この場所の土壌は乾性褐色森林土壌に分類され、尾根筋の割には団粒構造の発達した比較的肥沃な土壌でした。

樹種を覚えた後に実際に森へ入り、植生調査を行いました。写真は、植生調査の後にグループに分かれて、調査区の種数面積曲線をプロットしている様子です。

3次元レーザスキャナを利用した森林の構造調査の実演。真ん中の3脚の上にある装置がスキャナです。この装置を使えば、わずか数分で、葉や枝、幹の3次元座標を数ミリ間隔で測定できます。

9/5午後は、斜面の崩壊に関する講義を行いました。南アルプスフィールドの土壌はもろく、至る所に崩壊がみられます。

崩壊を止めるための施工について説明する様子。最近はマス目の間に植物が侵入できるようにして、自然の力を利用した土砂の固定を行っているそうです。


大規模崩壊地ホウキナギの地層。砂岩と泥岩の層が交互に並んでいます。

ホウキナギ

9/6最終日の午前は、天竜フィールド宿舎側にある阿多古川で、森林景観に関する講義を行いました。写真は阿多古川に続く山道を歩くようす。

阿多古川の様子。とても水がきれいで、夏はアユ釣りや川遊びなど、多くの人で賑わいます。今年は雨が少なく、水位がとても低かったです。

野外講義の様子。みなさん、直立不動で講義を聞いていました。

実習の最後(9/6午後)は、林業の現場を訪問して林業を行う上での工夫や問題などを学びました。実習全体のテーマは生態系サービスなのですが、実際の現場を見ることで、これまでに学んだ理論や概念と実際を結びつけて考えることが狙いです。下阿多古にある天竜フォレスターさんを訪問し、現場を見学させてもらいました。この写真は、作業道を設置するときの工夫を教えてもらっている様子です。コストを抑えつつ搬出効率をどのようにして高めるのか、路面が荒れないようにするための工夫など、とても興味深い内容でした。

スギの下にヒノキを植えた2段林を見学。ヒノキは耐陰性が高いため、被陰下の植栽に適していると考えられています。シカの害を防ぐために、あえて下草刈りをしないなど、森づくりにおける工夫を学びました。

同じく2段林において、説明のあとの質疑応答。

今回の実習に参加したみんなと天竜フォレスターの事務所前で集合写真。天竜フォレスターのみなさん、ありがとうございました。この後、学生を駅に送って解散しました。来年はより充実したプログラムを提供できるように努力したいと思います。

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